きのう9月29日、岩崎夏海クリエイター塾、第6回に参加してきました。

今回のハイライトは岩崎先生が「母親や周囲の人たちから愛されていた」という気づきを得た、この変化です。

でも、講義の順を追ってまとめていきましょう。

凡人こそ個性的に生きるべし

最初のトピックは、凡人こそ凡庸な人生を送ってはいけないということ。

岩崎先生は今年で50歳。そのため、同窓会が立て込んでいるそうです。で、その場である同級生の女性から聞いた話として、こんなことを聞いたそうです。

「うちの息子は立教大学を出てある会社に就職した。岩崎さんのように特別な才能があれば別だけど、うちの子にはないから、普通にサラリーマンをやるのがいちばんいい」

これはよくある考え方だと思います。何か才能があるとか、特別好きなことがあればその方向へ行けばいいけど、そうでないなら「普通に就職」するのがいい、と。

しかし、これは間違いで、凡庸な人間だからこそ、ただ流されて就職するのはだめで、個性を追求しなければならない。これが岩崎先生の最初のお話の主旨でした。

例として出されたのは、芸人のヒロシです。

ヒロシはお笑い芸人としては面白くなくて売れなくなったけど、彼は一人キャンプを趣味にしていて、そのYouTube動画がいま人気なんだとか。テレビでも取り上げられ、チャンネル登録者数も増えているそうです(今調べたら21万人でした)。

孤独という凡庸な性格、キャンプ好きというありふれた趣味。しかし、この2つを組み合わせてコンテンツを作ると、ジャジャンッ! 人気動画ができあがる。

つまり、凡庸な性格・趣味しかなくても、突出したものを生み出せるということです。

100人に一人の能力が2つあれば1万人に一人になれる

この話で思い出したのは、複数の能力を組み合わせるという威力のこと。

ある一つの分野で1万人中1位になるのはたいへんだけど、百人中1位ならなんとかなるかもしれない。それを2つ組み合わせれば、単純な掛け算なので、1万人に一人になれる。

たしか以前もこのお話は塾であったと思うのですが、まさにヒロシの例もしかり。

ヒロシは、孤独は孤独でしょうが、それでも芸人ですし、まるで人付き合いができないというわけではないでしょう。それこそ病的な人間嫌いとか社交下手ではないはず。

一方、キャンプがうまいとか好きとかいっても、それ単体で食っていけるほどではないはず(そうだったらごめんなさい)。

けれど、その2つの掛け合わせによって人気を得ることができる。これは注目すべきことです。

ちなみに、たびたび出させてもらっているYouTubeチャンネル・みるみるランドのカタリストれいなさんも一人キャンプ動画をあげていて、先日は「女性セブン」にも取材されて紙面で紹介されていました。キャンプはいま注目されているようです。

人間は3歳までの経験が重要

これは前回もお話があったところですが、人間は0歳から3歳までの経験によって形成される部分が大きいのではないか、というお話がありました。

岩崎先生は幼児の頃から自信満々で、「父親はまちがっている」と確信し、さらには論破したこともあるという方ですが、はて、そのつよさの源は何か、と考えたそうです。

出た結論は、0歳から3歳までの経験でそれを獲得したから。

先生はそのとき、父親がボストンのハーバード大学に行っていて、そこで生まれ育ったといいます。つまり、世界最高峰のインテリが集まっている彼の地で生まれ、その空気を吸って育った。

それにより、知的に圧倒的な自信をつけた。こういう見立てです。

3歳までというのはほとんど記憶がないし、言葉もよくわからないし、あまり影響を受けていないような気がしてしまいます。けれど、やはりその時期の経験はきわめて重要だろうというのです。

先生が0歳から2歳というと、1968年からの2年間。この時期にはアポロの月面着陸、ウッドストック、ヒッピー文化の隆盛など、さまざまな激動があった。価値観の刷新が起こっていた。その中で育ったことがかなり大きかっただろうというわけです。

0歳から2歳までのことを調べると、自分という人間がわかるかもしれない。こういう示唆がありました。

自分が0歳から2歳のとき何があったか

では、私が0歳から2歳のときは何があったのか。本当は親に事情聴取するのがいいのでしょうが、とりあえずわかる範囲で考えてみます。

時期としては1985年と1986年がそれにあたります。この2つの年にあった出来事、流行ったものなどを調べて列挙してみましょう。

1985年の出来事

  • 日本初のエイズ患者を認定
  • 男女雇用機会均等法が成立
  • 日本航空123便墜落事故発生 歌手の坂本九を含む多数の犠牲者
  • 女優の夏目雅子が死去
  • ファミコンソフト「スーパーマリオブラザーズ」発売され大ヒット
  • パレスチナ・ゲリラによるローマ・ウィーン両空港同時テロで20人が死亡
  • 流行語「イッキ!イッキ!」「キャバクラ」「パフォーマンス」
  • ヒット商品「ミノルタαー7000」「CDプレーヤー」

当時のテレビCMを見ると、半裸の女性が出てきたり性的な含みをもたせたような扇情的なものや、SONYのビデオテープやデッキなど映像に関わるものが目立ちます。

1986年の出来事

  • 急激な円高によるプラザ合意不況・半導体不況
  • アイドル歌手・岡田有希子が飛び降り自殺 その後、ファンの後追い自殺が相次ぐ
  • ファミコンソフト「ドラゴンクエスト」発売
  • 社会党、土井たか子が主要政党で日本初の女性党首に
  • ビートたけしとたけし軍団によるフライデー襲撃事件
  • ハレー彗星大接近
  • チェルノブイリ原子力発電所事故発生

いまYouTubeで見ると、この時期にはおニャン子クラブが活躍していたようです。

この頃はどんな時代だったか?

テロや航空機事故、アイドルの自殺など暗い出来事もありますが、一方で、当時のテレビ番組やCMを見ると浮かれている世相も見て取れる。クリティカルでシリアスな事柄もあるけど、それは心理的に切り離し、軽薄なノリを楽しんでいた時代なのかもしれません。

ファミコンや映像関係の商品の発売、原発の事故などは今の時代への連続性を感じさせます。

おれは砂場エリートだった

個人的なことまで掘り下げるのはちょっと手間なのでここではやりませんが、ひとつ思ったのは、当時の家の近くに砂場があったということです。

当時、集合団地の2階に住んでいたので、玄関をでて10秒で砂場にいけました。しかもそこは自宅の窓からばっちり見える位置関係だったので、おそらくかなり幼い頃から私はひとりでそこで遊ぶことを許されていたでしょう。他の子に比べて、圧倒的に長い時間、砂場遊びをしていた可能性が高い。

実際、その砂場でよく遊んでいた記憶があります。

小さい頃から今にいたるまで「何かを作る」ことが好きで、それにこだわりがあるのですが、その原点は、玄関を出て10秒で砂場という恵まれた環境にあったのかもしれません。

実は母親に愛されていた

さて、クリエイター塾の話に戻しましょう。今回の授業のハイライトは、岩崎先生が実は「母親に愛されていた」という部分。しかも、それを受け入れたという話。

先生はかねがね、母親に愛されてこなかったとおっしゃっていましたが、この授業のつい1週間ほど前にその考えを翻したそうです。むしろ、本当は母親に愛されていたのだ、と。

自分が愛されていることを認める。自分が愛される存在であることを受け入れる。そうすると、これから人生が好転していくかも、というお話でした。これまでは「愛されていないキャラ」を演じていたけど、それは終わりにしたいとのこと。

さて、翻って自分はどうか?

主観的には、母親に愛されていないとは思わないし、むしろ鬱陶しいと思うことの方が多いです。というより、母親に愛されてるとか愛されてないとかいうことを考えることがほとんどありません。

ただ、幼い頃のことを思い返すと、砂場でのことも含め、「作ったものを見てもらいたい。評価してもらいたい」という意識がつよかったのは確かです。これは現在まで続いている根源的な欲求となっていそうです。

勉強ができるとかどうでもいい

私は勉強がよくできる優等生で秀才でもありましたが、しかし、現在にいたるまで学力は二の次という意識もあり、「頭がいい」と言われると複雑な気分になります。

そう言われると「いやいや……」みたいなリアクションをしてしまいますが、これは半分謙遜とハニカミであり、残りの半分は「そこはどうでもいいんだよ。わかってないな」という感情でもあります。

ある程度は勉強もできるけど、1000人に一人というレベルではないし、そこにアイデンティティはない。創作の方が根っこにある。

小説を書いているというのは、「勉強ができる子」になるもっと前の、砂場で遊んでいた幼児の頃の自分を取り戻そうということなのかもしれません。テストや通知表なんかで評価されるより前の自分を。――今は、「砂」が「文字」になっただけなのでしょう。

こうして考えていくとキリがないですし、だれも興味がないと思うのでそろそろやめますが、しばし考えることによって、自分はそもそも「砂場の子」であることがわかってきました。

これからは自分をそう捉えるようにしてみようと思います。

課題:インクレディブル・ファミリー

後半は課題だった映画「Mr.インクレディブル」と「インクレディブル・ファミリー」についての発表と講評になりました。

私はこの前書いたレビュー記事をもとに発表を行いました。

夕焼けの美しさ、夕暮れでの火花の光、ゴム人間の動き。そういったことはピクサーの映像的な挑戦であるという指摘をいただきました。たとえば「カーズ3」なら、水に濡れた砂の表現とか。

その砂の表現はあまり視聴者の心に響かなかったようですが、「砂場の子」である自分にはもしかしたら刺さるものがあるかもしれません(今、そう思いました)。

参加メンバーと懇親会

ところで、今回はシェアハウスにいたときの友人Yさんを誘っていきました。Yさんは岩崎夏海についてはほとんど知らない状態で参加しましたが、思ったよりも興味を持ってくれたようでよかったです。

塾の参加者は今回たしか8人でしたが、このくらいの規模感であと残り半分6回やっていくことになりそうです。

次回の課題はこちら。

  • 漫画「王様ランキング」
  • 園子温監督映画「愛のむきだし」「冷たい熱帯魚」「恋の罪(?)」

注目ポイントは、「愛」です。