疲れているとき、不安なとき、心がざわつくとき、必ず読みたくなる本があります。それが勝山実氏の『安心ひきこもりライフ』です。

ひきこもり名人を自認する勝山氏の、日常エッセイでもあり、半自伝でもあり、思想書でもあり、実用書でもある。語り口は穏やかで、ウィットに富んでおり、ときには文学の香り漂う素敵な本です。

都合7回は読んでいるこの本を、今こそご紹介いたしましょう。

ひきこもり名人・勝山実とはだれか?

おや、あなたは勝山実をご存知ない? それは遅れていますね。

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彼はひきこもること約30年、ベテランのひきこもりです。当人曰く、「ひきこもり名人」。高校卒業に浪人生となり、しかし大学進学が叶わず、実家でひきこもりとして生活して今日に至ります。

途中でアルバイトをしたり、近年は出版・寄稿・講演なども行っており、そこだけ見ればひきこもりに見えない部分もありますが、40代後半の現在も実家の団地に住んで障害者年金で暮らしている立派なひきこもりなのです。

そんな勝山名人が出した2冊目の本が『安心ひきこもりライフ』。

この本のメッセージは、すでにタイトルに現れています。つまり、「ひきこもりから抜け出すんじゃない。むしろ、安心してひきこもれるようになろう」ということ。

過去のひきこもり本はいかにして社会に復帰するか、家族がどう接するべきか、そんな話ばかりでした。あるいは当事者の書いたものにしたって、「自分はいかにひきこもりから抜け出したか」という、そういう切り口のものばかり。

しかし、そうした有象無象とは一線を画すのが、この『安心ひきこもりライフ』なのです。

心温まるエピソードの数々

この本の中には、心がほっこりするエピソードや格言がたくさん紹介さています。

たとえば、「完全歩合制」との見出しがある短いエピソード。ひきこもりの「完全歩合制」の仕事とは、自動販売機の釣り銭受けを探って小銭を手にいれることです。お金がないなら、拾いに行けばいい。そんなプリミティブで純粋な考え方を思い出させてくれる、素敵なエピソードです。

あるいは、「ひきこもり増上慢」という一節。勝山氏は、彼女ができて調子にのるひきこもりに釘を刺します。そんなことで調子に乗っていたら、もっと大切なものを失うと。

少し、その部分を引用しましょう。

「元々ひきこもりも不登校も、大勢から取り残され、ひとりきりだったはずです。進学、就職、結婚など、仲間が自分よりも高いところへ旅立っていくのを見送る時の、凍死してしまいそうな寒い気持ちは、その立場になったことのない人にはわかりっこありません。

最後のひとりの心意気。これこそ、ひきこもりの中心点です」(p.56-57)

最後のひとりの心意気。なんと美しい言葉でしょうか。何度も読んでいるはずなのに、また目頭が熱くなってしまいました。

この他、世間や両親に対するユーモアたっぷりの皮肉や、金銭に関わる実用的なアドバイス、ひきこもりならではの家庭内エピソードなどが盛りだくさんです。

元ひきこもりとしてのシンパシー

ところで、なぜ私がひきこもり名人のひきこもり本をこんなに愛してるかといえば、それは私自身も元ひきこもりだからです。

勝山名人同様、私も高校時代に学校のつまらなさ、勉強のくだらなさに辟易し、愛想を尽かし、学業を放棄していた時期があります。高校2年からはしばしば学校を休み、3年生のときは朝のホームルームに出た記憶がありません。

それでも退学まではできなかったのが私の弱さですが、高校を卒業後の1年は就職するでもなく進学するでもなく、ひきこもり生活を送っておりました。アルバイトはほんの1ヶ月ほど、町役場で選挙の受付をやっただけ。

そんな経緯があるので、ほぼ同様の年齢で学校を退学し、そのままひきこもった勝山名人にはシンパシーを覚えるのです。

もっとも、私自身は単位ギリギリとはいえ高校を卒業し、1年はひきこもっていたものの次の1年で予備校に通い、結局は大学へと進学しました。これにより、私は「元ひきこもり」という身分を隠し、「2浪して大学に行ったやつ」へと擬態することが可能となりました。

それからの学生生活はなぜか比較的順調で、勝山名人が憧憬を抱く「楽しいキャンパスライフ」なるものを満喫していたのですが、しかし、どれだけリア充を気取ろうとも根っこの部分はギンギンのひきこもり気質にできておりますゆえ、ひきこもりへのシンパシーが消えることはないのです。

ひきこもりとしての心意気

最後のひとりの心意気。これを忘れたくありません。

私も今年34歳になる。地元の同級生はほとんどが結婚しています。たいてい、一般企業やお役所に就職し、働いています。マイホームを購入した人もいるとか、子供が2、3人いるとか、そんな話も聞きます。

しかし、それを妬んだりしてはひきこもりの名折れ。それで焦ったりしては、ひきこもりの風上にも置けない。

そもそも、普通に就職して働いて、彼女を作って結婚して、家を買って子供も作って、なんてことができる人間ならば、ひきこもりにはなっていないのです。

あるいは、アフィリエイトをやっている人は、とにかくたくさん稼ごうとする。ガツガツしている。月収100万だ200万だと鼻息荒く、資本主義の戦場で気炎を上げている。いかがなものでしょうか。

本当は、そんな大金など必要ないのです。月に100万円も入ってきてどうするのですか? あなたももし月収100万円越えを目標としているなら、頭を冷やしてください。冷静になって考えてみましょう。

月に100万円なんて、必要なはずがないのです。ぼったくり大家から借りてる賃貸を引き払い、無駄に贅沢な外食をやめ、衣類はもらいものとユニクロで済まし、飲み会という野蛮なイベントへの出席を一切とりやめましょう。車があれば売り払って3万円の原付に乗り換え、配偶者があればスパッと離婚し、老父母の待つ実家へ帰りましょう。

ほら、そしたらもうお金なんてほとんどかかりません。月10万円もあれば十分すぎる。

月々それくらいのお金で十分に満足して暮らす。これこそが、安心ひきこもりライフ。もっと言えば、これこそが現代の日本人としてあるべき姿ではないでしょうか。

アフィリエイトはひきこもりのためにある

書評からは少々ずれますが、アフィリエイトとひきこもりの関係についても言わせてください。

まず、勝山名人はアフィリエイトには否定的な立場を取っております。引用しましょう。

「アフィリエイト、ネットオークション、デイトレード、SOHO、結局こういう嘘ビジネスの儲け話にひきこもりが心惹かれてしまうのは、劣等感によるものです。その代表が低学歴、高年齢、経験なしという三大要素で、アフィリエイトの儲け話は見事にそこを突いてくる。誰でも未経験ですぐに始められ、儲けられると攻めてくる。アフィリエイトからひきこもりを救え、これこそほんとうの支援です」(p.24)

たしか、他の箇所には「アフィリエイトはぜんぶ詐欺です」とも書かれていたと記憶しています。どうやら、勝山名人はアフィリエイトで損をしたことがある様子。

しかし、アフィリエイトが詐欺でないことは、私は身を持って知っています。むしろ、しっかり取り組めば月10万円くらいは何とかなる可能性が高い

すべての人が勝山名人のように障害者年金を受給できるわけではありません。でも、いくらひきこもりといえど、いくらかの現金収入はないと厳しい。

となると、ひきこもりがアフィリエイトに取り組むのは「あり」ではないかと思います。ありあまる時間を自室や図書館で過ごし、ただ悶々と思い悩み、劣等感や焦燥感と戦って疲弊しているだけならば、パソコンひとつで始められるアフィリエイトは有力な選択肢となりうるでしょう。

どうせいつまで長引くかわからないひきこもりです。だったら、だめでもともと。2、3年かかってもいいから、月10万くらい稼げるようにアフィリエイトをやってみるのは悪くない選択だと思うのです。なにも月100万とか50万とか30万とか、そんな目のくらむ大金はいりません。10万でいい。

サラリーマンのようにあくせく働いて、好きなことがろくにできない人生より、月10万ほどの収入を得てハナから悠々自適に暮らすひきこもりの方が、あるいは豊かな人生と言えるかもしれない。

むしろ、だれとも会わずに収入を得られるアフィリエイトという仕事はひきこもりのためにこそあるのではないか。と、そう思います。

心苦しい思いで親から小遣いをもらうのはもうやめましょう。実現するかわからないベーシックインカムに期待するのもやめましょう。今から、きょうこの時から、アフィリエイトを始めるのです。

リメンバー・ひきこもりマインド

ネットビジネスの世界ではマインドが大事だと言われます。曰く、「他人のせいにしてはいけない」「ポジティブ・シンキングが大事」「思考は現実化する」うんぬん。

しかし、真に自然で人間的なマインドは、勝山実氏が語るひきこもりの心意気、その心象風景にあるのです。背伸びをせず、無理をせず、自分を立派に見せようともせず、ただ目の前の問題にできる範囲で対処する。これです。

この記事を書きつつ『安心ひきこもりライフ』をぺらぺらとめくっていたら、また最初からゆっくり読みたくなってきました。なので、そろそろこの記事を終えることにしましょう。

勝山実『安心ひきこもライフ』はAmazonにて購入できます。この前作であり処女作の『ひきこもりカレンダー』と、2017年刊のKindle本『バラ色のひきこもり』もあわせてどうぞ。


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