ピクサーの最新映画「インクレディブル・ファミリー」を見てきました。最高に面白い映画でした。

題名通りファミリー向け映画ですから、わかりにくいところはまったくありません。けれど、なぜ面白いと感じるのか、あえて理由を分析するなら3つの点が挙げられます。

インクレディブル・ファミリーの基礎情報

言わずと知れたディズニー・ピクサー、その長編20作目がこの「インクレディブル・ファミリー」。前作「Mr.インクレディブル」から14年ぶりの続編となります。

前作の主人公はMr.インクレディブルという元ヒーローのお父さんでしたが、今作の実質的主人公は奥さんのイラスティガール。一家はヒーロー活動が法律で禁止され、超能力を持つ家族ともども世を忍ぶ生活をしています。

ジャンルとしてはスパイものとスーパーヒーローものを混ぜたような作品。しかも、家族の物語でもあります。インクレディブル一家の家庭事情とそれぞれのヒーローの活躍が楽しめる全世代向けの作品です。

では、この作品が面白かった理由を3つ、分析していきましょう。

面白い理由1:夕暮れと朝焼けの美しさ

「この映画でもっとも印象的だった場面はどこか?」と聞かれれば、8割くらいの方が中盤の暴走列車を止めるシーンだと答えるでしょう。

急遽、逆走をはじめるリニアモーターカー、それをバイクで追跡するイラスティガール。このバイクチェイスのシーンは最高

とりわけこのシーンをいいものにしている理由は夕焼けの美しさです。ピンク色に染まった雲、西日を受ける都会のビル群、駅から見える山際の夕日、それらがすばらしい。

しかも、チェイスシーンが進むに連れて光の具合も変化していきます。

リニアがいよいよターミナル駅に到着するというとき、あたりはだいぶ暗くなっており、そのときレールから弾け飛ぶ火花がきれい。ライトも、夕暮れの中で絶妙に光って美しい。

完全な夜の中でビル群の光や車のヘッドライトが光るのもきれいですが、これには変化が伴わないのでありふれています。が、夕暮れの中での光というのは刻一刻と変化するためか、非常に幻想的です。

それから最後、巨大客船が港へ突っ込もうかというとき、空は朝焼けに染まっています。しかもその中を飛行機が雲を引いて飛んでいく。最高です。

面白い理由2:ゴム人間で遊び尽くす

一つ目と同じ、バイク・チェイスのシーンです。ここのゴム人間の使い方が面白い

イラスティガールは全身ゴム人間で、手足や胴体が伸びたり、パラシュート状に広がったり、ぺちゃんこに潰れたりできるのですが、その性質を存分に使っているのが面白い。

彼女の乗っているバイクは前後が分かれるようになってるのですが、車体を分離して胴体を伸ばし、それを利用してジャンプしたり空中移動したりするところは最高。リニアの上に乗ったあともパラシュートになって減速したり前輪と後輪をわけてトンネル内の壁を走行したりと、映像作品ならではの面白さがたんまりあります。

思うに、この面白さと関連付けされているのは、ワンピースのルフィです。

ワンピースの連載がはじまったとき、私は中学一年生くらい。悪魔の実を食べてゴム人間になったルフィがどんなことをするのか、わくわくしたものです。あるいは、「自分なら何をするかな?」と妄想して楽しんでいました。

けれど、結果から言うとルフィのゴムの使い方は今ひとつ好きになれませんでした。漫画だからというのもありますが、やれることの幅がそれほどなく、ゴムゴムの銃乱打(ガトリング)という連打は映像としてイメージしにくく、物理的な合理性に乏しい。

このときの欲求不満が、時を超え、イラスティガールによって解消された感があります。

面白い理由3:設定と物語に合理性がある

「インクレディブル・ファミリー」は登場人物の設定にも物語の筋にも合理性があり、納得感がありました。これも面白かった理由の一つです。

単体で見るとこれは意識しない要素ですが、つい最近「ネクストロボ」と「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」という作品を見たため、比較して気づきました。この2本は設定や物語の理屈が弱いけど、「インクレディブル・ファミリー」はそこがしっかりしている。

たとえば「ヴァレリアン」の映像は非常に面白く、設定や物語を意識しない予告編はピカイチでした。

が、登場人物の設定や物語の情報が入ってくる本編では飲み込みづらい点が多く、入り込めませんでした。

序盤にある巨大マーケットは、絵としては魅力的なのに、それが仮想空間にあるのか別の場所にあるのか、主人公のいる場所とどういうルールで繋がっているのかがわかりにくく、緊迫感が生まれていません。後半ではさほど罪のない異星人を主人公たちが惨殺しておいて、別の異星人のためには命をかけるという、よくわからない展開。

一方、「インクレディブル・ファミリー」では主人公たちが何をしたいのか目的と動機が明確ですし、キャラクターたちの性格や設定もしっかり定まっている。それぞれのキャラクターが持つ超能力もわかりやすい。

「映画はストーリーより映像が大事」というのはそうなのですが、やはりストーリーや設定に筋が通っているというのも大事なポイントだと感じました。

他にもいいポイントはたくさん

面白い理由の大きなものを3つ挙げてみました。

  1. 夕暮れと朝焼けの美しさ
  2. ゴム人間の動きの楽しさ
  3. 設定と物語の飲み込みやすさ

ただ、これら以外にもいいところはたくさんあります。たとえば素材の本物っぽさ。プールに飛び込んだときの水の動きや、フロゾンが作るさまざまな雪や氷の感じ、イラスティガールのバイクの光沢やスーパースーツの生地の感じ。すごいですよね。

あと、私は吹き替え版で見たのですが、綾瀬はるかのヴァイオレットの声が好きでした。本業じゃないのにあんなにハマるなんてすごい。

敢えてウィーク・ポイントを挙げるなら

「インクレディブル・ファミリー」はほとんど最高の映画ですが、あえていちゃもんをつけるならどんなポイントがあるか、それも書いておきましょう。

ポイント1:悪役の動機が納得しづらい

設定に合理性があると書いたのですが、本作で唯一弱いと思ったのは悪役の動機です。彼女はスーパーヒーローに反対しているわけですが、その理由がよくわからない。

一応、「両親が強盗に襲われたとき、ヒーローを頼ろうとしたせいで殺された」という話があるのですが、別にそれはヒーローのせいじゃないだろうと思ってしまいます。実際、彼女の兄はヒーロー大好き男です。

それから、ヒーローを頼って自分は何もしない大衆蔑視のメッセージがあるのですが、これは最後まで回収されません。大衆は軽蔑するだけして、それだけ。

最後に、ヒーローの活躍に鼓舞された市民が立ち上がり、自分たちの行動で危機を回避するとか、逆にヒーローを助けるみたいな展開があればもっときれいな着地になったと思うのですが。

ポイント2:家族についてのメッセージがない

この作品の邦題は「インクレディブル・ファミリー」ですが、家族というものについての新しい問題提起やメッセージは特にありません。父親が家庭で子育てや家事をするという描写はありますけど、それだけです。

しかし、「インクレディブル・ファミリー」はたまたま超能力を持ったヒーローが家族だったというだけで、いわば彼らはチームなので、家族だからどうということはないのです。というかこの映画、タイトルは「イラスティ・ガール」でもよかったくらいだと思います。

まとめ

以上、「インクレディブル・ファミリー」の面白さについて考えてみました。ついでに弱点も。

何にせよ、この映画は文句なしに面白いです。かなり小さい子が見ても楽しめるでしょうし、大人でも飽きることなく見られます。これを「つまらない」「面白くない」と言う人はなかなかいないんじゃないか。

文句なしに、お勧めできる作品です。