隣町のバイクショップに行って来ました。

お目当はフルフェイスヘルメットとグローブだったのですが、いざ店内から出て車へ乗り込もうとすると、駆け寄ってくる色黒の青年が一人。彼の手には一本のクリーニングワックスが握られていました。10分後、私はそのワックスを購入していました。

はて、何が起こったのか?

駐車場でクリーニングワックスのセールスを受けた

バイク本体やヘルメット、付属品などを販売しているショップを一通り見たあと、私は家へ帰ろうと車に乗り込もうとしました。

そこへ駆け寄ってきたのは日焼けした青年——というより、高校生くらいに見える少年でした。彼は「いまお時間よろしいですか?」という感じで訪ねてきて、あるクリーニングワックスのことを紹介してきました。

このセールスの仕方がうまくて、私は終始関心しておりました。

一見、高校生のアルバイトのように見える(実際そうなのかもしれない)少年がこんなにうまくものを売れるなんて、驚きです。では、どこがうまかったのか? ポイントごとにご紹介しましょう。

1)ワックスを売るのに絶好の場所とタイミング

これは会社の戦略ですが、バイクショップの前に小さなテントを張って、そこで洗車用のワックスを売る。場所としては最高です。その店に来る人はかなりの確率でバイクを持ってるし、車で来店してるわけなので、ワックスを欲しい属性としてはどんぴしゃ。

さらに、帰りがけに声をかけてきたのもうまい。すでに店内で買い物をした人は、追加でものを買うのに抵抗があまりありません。店に入るときに声かけされたとしても、たぶん買わなかったでしょう。

2)ベネフィットを体感させる

私は自分の車にいざ乗り込もうとしていたところ。そこへワックスを持って現れたわけなので、当然のごとく、「ちょっとやってみますね」ということになります。

ワックスを窓ガラスに吹き付け、ささっとクロスで拭うと、もうピカピカです。

「水で洗車しなくても、これだけでいいんです。これで1ヶ月、何もしなくていいんです」

といった感じで、口頭でもベネフィット(利益)を説明してくれるのですが、

「ちょっと爪でかるく撫でてみてください」

と言われて触ってみれば、ツルッツル。後部座席の汚れたガラスを比べるとまるで違います。

ベネフィットを視覚と触覚でもろに目の前で体験させる。これほど効果的なセールスはないでしょう。

おまけに、実演に使われたのは普段乗っている自分の車です。臨場感が違います。さらに、一部とはいえ実際にきれいにしてもらってるので、いわゆる返報性(お返しに買わなきゃ)も働くわけですね。

3)難しい単語を使わない

これはあとから気づいたのですが、あの若きセールスマンは難しい言葉をまったく使いませんでした。いま見てみると、購入した商品の名称は「FW1WAX.JP」です。缶には他にも「FW1」「CLEANING WAX」とかいろいろ書いてある。

でも、「こちらのエフダブリューワンは……」なんて横文字はまったく使っていませんでした。

もちろん、どういう成分が入ってるとか、どこの会社が出してるとか、そんな話もしません。ただ、「これを使えば水無しで洗車ができて、しかも効果が長持ちする」ということだけ。

アフィリエイトサイトを作ってるとつい難しい言葉を使ってしまいがちですが、難しい言葉をまったく使わない姿勢、見習いたいものです。

4)適度に質問をする

彼は一方的に話すだけでなく、ときどき「普段はどうやって洗車をしていますか?」「自宅にバイクはありますか?」など、簡単な質問をはさんできました。

それに応じてまた適切な説明をしてくれて、これも好印象。

対面のセールスでも電話営業でも、アフィリエイトサイトでも同じだと思うのですが、一方的に情報をならべたてる営業・ライティングというのは聞いてるこっちがなんだか息苦しくなってしまいます。ささいなことでいいから、何かやりとりをしたい。

ライティングでも、相手に簡単な質問を投げかけることで、親近感を感じさせたいものです。

5)最後まで値段を言わない

最後の方まで値段を言わなかったのもうまいなと関心しました。

まずは商品のよさをできるだけ説明して、実演して見せ、こっちが「いくらなんだろう?」と知りたくなってから、後半でようやく1本2,500円という値段を言う。

しかも、その値段を言う前に「似たような商品だともっと小さくて5,000円とかしちゃうんですが」という前置きも忘れない。そう言われたら、「こんなにでっかくて2,500円は安い!」と思っちゃう。

6)アップセル・クロスセルも忘れない

私が買うことを決めて、車から小さな販売用のテントに移動すると、そこでクロスと外付けのトリガーが別で販売されていることが判明しました。

さらに、1本ずつだけでなく、2本セット、6本セット、12本セットなどが用意されていたのです。

彼は最初、「いちいちあとで注文するよりはということで、まとめて買っていくお客さんもいらっしゃいます」ということで12本セットをさりげなくオススメしてきました。

けど、おそらくこれは前振りで、最終的な落とし所としては「一番人気」とあった2本+クロス+トリガーの6,000円のセットだったのでしょう。

私はそこまで出したくなかったので結局1本+クロスを3,200円で買いましたが、「僕からのサービスでトリガーの400円は値引きしておきますから」ということまで言ってくるしたたかさ!

もうちょっとお金に余裕があれば、この6,000円のセットを買うところでした。

気がついたら3,200円でモノを買っていた驚き

今回は「セールスに関心した」というちょっと売る側目線も入っていてワックスを購入したのですが、それでもとにかく、気づいたら3,200円の商品を買っていたのは事実です。

もう少しで6,000円のセットを買うところでもありました。

もしあの商品がお店の棚にあるだけだったら絶対に買ってないし、もう少しセールス・トークが下手だったとしても買ってないはずです。

もしあの少年がワックスを持たず、「あちらで実演をしておりますので見ていきませんか」と言っていたら、私は「帰って仕事があるので」と言って車に乗り込んでいたでしょう。

あのセールス・トークはどこまでマニュアルだったのかわかりませんが、とにかく勉強になる経験でした。

買いたいのにヘルメットは買わなかった

余談ですが、実はこのとき、いちばんの目的だったヘルメットはお店で買いませんでした。

店内には100から200くらいのたくさんのヘルメットがあり、「よさそう」と思うものだけでも何十とあったのですが、結局、決めきれずに出てきてしまったのです。

サイズのこともよくわからないし、どのメーカーがいいのかもわからないし、「あとでネットで調べてAmazonで買おう」という、いつものパターンになってしまったのです。

もしあのとき、店員がちょっと声をかけてきて、「どんなものをお探しですか?」「こちらはどうでしょう?」などとセールスしてくれれば、ほぼ確実に買っていたはずです。予算は10,000円くらいのつもりだったけど、トークによっては17,000円くらいでも買ったかもしれません。

こう考えると、セールスは本当に大事です。

まとめ

ネット上でも、検索ユーザーはヘルメットの棚をうろついていた今日の私みたいな心理のはず。だからこそ、商標キーワードであっても、しっかりベネフィットを伝え、迷いを取り去って販売することが重要なのだと思います。

買いたいのに買えない人に、買わせてあげる。

これを意識してライティングを工夫していきたいものです。